体内で生成される正常なステロイドホルモン

時間や空間感覚の変調をもたらし、精神が一時的に昂揚し、非常に感謝の念が強くなったり、強い健康を感じるようになる状態である多幸感は、性ホルモンを含むステロイドホルモンの正常な分泌によってもたらされることも分かりました。性ホルモンの分泌を刺激する物質は、脳の奥深いところにある視床下部というところから出ています。視床下部周辺は、情動や愛情などを司る場所であるため、愛し合っていることがとても健康によいことや多幸感につながる、ということがよく理解できますよね。

また、ステロイドホルモンは、血糖値の上昇、水分の保持、気分の高揚など、すべて生体のエネルギー利用を助ける方向に作用します。このため、ステロイドホルモンを分泌する副腎皮質の機能不全や、副腎皮質を制御する下垂体の機能不全でステロイドホルモンが不足すると、全身の倦怠感などが出現するのです。いわゆる環境ホルモンや製剤などの内分泌撹乱物質は、ステロイドホルモンの受容体と結合し、生体に悪影響を及ぼすことが多いとされています。体内で分泌される正常なステロイドホルモンは、心身の健康に大きく役立っているようです。そして、その分泌を正常に保つに必要な部分もやはり脳内の生理現象なのです。

脳の中心の活性化と正常化

後頭部と口の奥の中心あたりにある視床下部は、体温調節や摂食行動、飲水行動、性行動、睡眠などの本能行動、及び怒りや不安などの情動の中心です。視床下部は、大脳辺縁系という、感情や愛情などの形成に大きく関係するところや、嗅覚や自律神経と関係する乳頭体核と隣接していて、そのようなところの刺激により性腺刺激ホルモンなどを放出します。視床下部の前下方にある間脳は、自律機能の調節を行う総合中枢です。ここがうまく働かないと、自律神経失調症などの問題が起きます。

中脳よりも奥にある脳の自律機能を司る中枢が、それぞれ呼吸運動や血管運動などの個々の自律機能を調節するのに対して、視床下部は交感神経・副交感神経機能及び内分泌機能を全体として総合的に調節しています。このように視床下部は、自律神経を正常に保つためのとても重要な場所です。気分が悪い時には、たいてい後頭部の視床下部の周辺が冷えていることが多く、特に自律神経失調症がひどい場合は、とても熱いタオルをあてても温かいと感じないほどです。そのような場合は、タオルでゆっくりと時間をかけて温めていくと、症状は改善します。

 

 

脳内の生理の正常を保つ

人間の脳は、結構奥深いところで健康や幸福感のほとんどをまかなっています。新しい表層の脳は、社会的なことや、言語や法則、考えたり創造したり、そして記憶を積み重ねたり、未来を思い浮かべたり、逆に多くの不安や悩み、心配や囚われなどがうごめいている場所で、人間が人間らしく生きるために後天的に増幅されてきたものです。

社会や人間関係、秩序や規律に囚われて翻弄されていると、脳の表層のところで緊張が高まりすぎたり、また、現実から逃れるために緩慢になりすぎたりして、深くにある脳の大切なバランスを大きく壊してしまいます。それで、脳内に正常に分泌されるはずの多くのホルモンなどの大切な物質が、過敏に放出されたり、不足したりして、多くの精神的な作用をおこしてしまいます。そしてその状態が、表層の脳にある考えや囚われ、悩みなどの不安を適切に処理することができなくなり、より不安が高まり囚われ、悪循環をおこしていくのです。このような状態がひどくなると、脳内物質を補ったり、調整するための薬などに頼らなくてはならないようになったり、下手をするとドラッグや、アルコール依存症に陥ったり、そこまで行かなくてもギャンブル依存や、ストーカー、人格障害などを引き起こしてしまいます。

脳内の状態を正常に保つためのヒントを今回特集を組みましたが、要は、いかに何事も楽しむか、ということが大切だということだと思います。現在、人の心は脳でほとんどのことが解明できるようになったようです。まだまだ未知の分野は多いようですが、これからもまず、病は気からといわれるように、心の安定すなわち脳内を正常に保つことも大切に心がけていきましょう。